専門職としての生活訓練/掃除編

くるみラボでは、生活の訓練を開始して3カ月が経過しました。

取組の一部を紹介します。

お子さんが療育を受けている間に保護者の方と職員が面談を行いました。その中で最近、お子さんが小学校に行く前に「きょう掃除ある?」と保護者の方に質問してくるという話題になりました。質問の理由を聞くも、お子さんからの返答はなく、どうしたものか悩んでおられた様子でした。職員より、もしかしたら掃除が嫌で発言している可能性があること、雑巾が上手に絞れないなどの理由が考えられることを伝え、次回、掃除について本児がどの様に思っているのか療育で取組むことを提案しました。承諾されましたので、取組んでみました。

【机上課題(掃除の概念・理解の確認)】

まずは、机上課題にて、掃除をしている写真(ほうき、ちりとり、雑巾の使い方)をみてもらい概念理解の確認です。掃除の意味はわかっており、説明の中で「ぼくこれ好き」と雑巾を指さしました。雑巾は「今、係でしていて好き」と言います。ほうきは?と聞くと、「前、ほうきだった。ぼくこれ(ほうき)嫌い。難しい」と言われました。実施に今から掃除をみせてほしいと話をすると、「いいよ。雑巾する」とノリノリです。

【実践課題(道具の操作性・やり方の定着度合い確認)】

雑巾の絞りは、躊躇なく雑巾を洗い始め、バケツの周りに水滴は落ちてしまうものの、上手に絞れていました。棚、床どちらも、しっかり端で折り返して隙間が空かないように拭く意識があり、端は拭き残しがありましたが、おおむね上手にできていました。

ほうき操作は、ペーパータオルを小さくちぎったものを6畳ほどの広さにバラまき、それを掃いてもらいました。なにも指示を出さず、掃くだけをお願いすると、大き目のゴミをみつけて、なんとなく横に掃いていき端に寄せるのみで、全体を掃くこと、1か所にごみを集めることは難しい現状でした。掃き掃除は、雑巾と比べ、どこまで掃除したか目に見えてわかりにくいという特徴があります。そのため自分が部屋のどの辺を掃いているかをイメージしながら履くスキルが必要ですが、そのスキルが難しいことが実践課題で判明しました。その後、ここまで掃いてくれる?とテープで印をつけると、印にごみを集めることができました。ですが、掃けたのは大きいごみのみで、小さいごみを集めることは困難でした。ちりとり操作は、ちりとりを片手に持ちながらの操作は難しいですが、大きいごみはちりとりに乗せることができました。

【掃除に対する意識の確認、今後の対策】

実際に個別療育で取り組んでみることで、職員の思い込みではなく、どこが難しいか、どこに苦手さがあるのか一緒に確認することの重要性を改めて感じました。今回は、このお子さんは、ほうき掃除への苦手意識が高いこと、実際にほうき掃除が難しかったことが判明し、現在は、係が変わって雑巾掃除に変わっているから、掃除に対する質問も減っているのかもという推測ができ、保護者様も納得されていました。ほうき掃除が苦手とわかったことで、今後また同じような発言が聞かれた際は、掃除の際の掃くエリアを決めてもらったり、ごみを集める場所に印をつけるなどの環境調整で本児にとっても苦手さが軽減できると思います。生活訓練を通して凸凹を理解する、支援方法を考えるきっかけになった一例でした。