専門職としての生活訓練/入浴:洗体編

入浴は、昔から「健康に良い」と言われてきました。

科学的に、温熱作用や静水圧作用に浮力作用による効果が得られると言われています。

また、清潔保持や働くときのマナーとして重要だと思います。

その様な中で、体を洗う動作が嫌で入浴しないとなると大変です。

くるみラボでの入浴訓練、体の洗い方についてご紹介します。

体を洗う動作は

身体の機能的に4歳頃には完全ではありませんが、自分で体を洗うことができると言われています。

体を洗う動作の自立には

・ボディイメージのスキル(頭・背中・お尻等の後ろで手が組めるか?)

・言語概念のスキル(身体の部位名を言われて触ることができるか?入浴の目的を知っているか?)

が土台として必要のため、机上課題などで事前準備をして取組みます。

1)机上課題での取り組み

「入浴の概念理解(入浴する意味がわかる)」ができていないと、入浴動作は身に付きにくく、拒否や適当に入ることに繋がります。清潔にすることの意味、入浴動作が何につながっているかがわかっていない可能性が高いため、何の為に洗うのか、机上課題で概念形成を行います。また、身体の部位名がわかっているかなども合わせて評価し、身体を洗うための知識を身に着けてもらいます。

2)ボディイメージを高めるための模擬動作の取り組み

 背中を洗う動作は、大人は当たり前にできる動作ですが、見えない部分を頭でイメージしながら洗う必要があるため、子供には難しい動作になります。大人が動きをみせるだけではなく、実際に洗体タオルをもつ子供の手を握り、動かす方向などを経験してもらうことが重要です。特に背中を拭く動作・洗い流す動作は、入浴以外では使うことのない動作です。正しい動作で、体の使い方や動かし方の経験回数を増やす必要があります。鏡を見ながら自分の動きと背中の位置感覚を合わせたり、実際に濡れていないタオルで動作の練習をしたり、長い筒を背中に回して持つ練習をするなど、動きとして学習を促します。また、見えない部分にシールを貼ったものを取ってもらったりして、見えないところの感覚を養う練習も行いイメージ力を高めます。

3)実戦練習での取り組み

実践でしか練習できないこととして、力加減のコントロールがあります。力のコントロールが苦手なお子さんには、身体感覚(触覚・固有感覚)の過敏さ・鈍感さに凸凹がある場合が多く、体の部位によって洗い方を変える必要があることを理解できず、なでるだけであったり、逆にゴシゴシ強く洗いすぎたり適切な行動が難しいことがあります。顔はそっと洗う、手足はゴシゴシ洗うなど力加減を段階付けで示し各部位に応じた洗い方を身に着ける練習を行う必要があります。また首、耳後ろ、足の指など細かい体の部位まで意識して洗えているかも、実践練習を通して定着を促します。

4)家庭で一人で出来るようになるための取り組み

実践練習で動作をしてみると、どれくらい理解しながら入浴しているかも見えてきます。本人の理解度を評価しながら、家庭でも一人でできるように、机上課題と実践練習の繰り返しで、より正しい方法を身に着けたり、子供たちにあった視覚支援の提案や、声掛けの仕方も保護者様に伝達しています。

入浴訓練の取り組みの中で、ご家族からの入浴についての困りごとを聞くと、大きく分けると4点あります。

  • “洗う“は、石鹸や泡をつけることだと思っている。
  • 見えにくい部分は洗い残し、流し損ねがある。
  • ささっと表面を撫でるだけで、ゴシゴシ洗えない。
  • ていねいに細かい部分が洗えない。適当に洗っている。

です。

①については、机上課題でしっかり概念形成から取り組みます。

②については、ボディイメージができているか評価を行い、入浴訓練に繋がるように模擬動作の練習をします。

③については、机上課題で部位ごとの洗い方を学習した後、実践練習でよりリアルに洗い方の練習をします。

④については、概念形成ができていない、力加減が難しい、身体の部位を正確に認識できていない、ボディイメージができあがっていない等、複数の理由が複合していることが考えられます。どこに苦手さがあるのか、評価をして根本的な原因をはっきりさせ、対策や訓練メニューを考えることが重要になります。

この様にご家庭での様子の聞き取りをし、実際の療育場面でアセスメントしながら、訓練計画を立てます。

体を洗う訓練を開始して、ご家庭でもできるようになったと、ご家族から嬉しい声が届いています。

私たちは、常に将来のお子さんに必要なことを逆算して療育内容を考えています。就労に向けて、自立に向けて生活スキルの定着は必要不可欠です。いつか勝手にできるようになるではなるわけではありません。療育場面で生活の自立に向けたきっかけを作り、家庭でも定着できるように専門的な支援方法、アドバイスを行うことが私たち役割だと考えています。それぞれご家庭でのやり方、教育方針があることも理解しつつ、専門家として、どこに困り感があるのか、専門的な視点で考え、療育に取組み、「一人でできた」につなげていきたいと考えています。